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「行きたい場所」を「行ける場所」へ!

こんにちは。言語聴覚士の加藤です。

突然ですが、皆さんはどこかに出かけたい時はどうしますか?

一緒に行きたい人を誘って、日程を相談して、行き方を調べて、チケットを買って…

訪問リハビリの現場では、そんな当たり前のお出かけが、病気を機に難しくなってしまうケースにしばしば出会います。今回は、「行きたい場所に行きたい時に行けない」という壁を見事に突破した利用者さんのお話です。

3年前に50代で脳梗塞になったお一人暮らしのSさん。私たちの事業所からは、看護師、作業療法士、言語聴覚士がそれぞれ週1回ずつ介入していますが、それ以外にも複数の事業所から障害ヘルパーさんが介入し、日常生活を支えています。

失語症があるので、言いたいことを言葉に出来たり、出来なかったりはありますが、図を描いたり、言葉以外の方法も駆使して伝達するのが抜群に上手く、支援者はとても楽しい時間を過ごさせていただいています。

ただ、右半身の麻痺があるので移動は車椅子。私たちが介入を始めた頃は、好きな場所に行くという形の外出は中々出来ませんでした。大好きなマクドナルドも、散髪も、ご家族が月2回訪問して下さるタイミングに合わせていました。

でも、ケアマネジャーさんの尽力により、障害ヘルパーさんが介入する頻度や時間が増えたのを機に、Sさんはそんな壁を少しずつ、着実に突破してきました。

ファストフードや牛丼チェーン、図書館、100円ショップ、シマムラ、床屋さん、ビックカメラ。

毎回どこに行きたいかは、ご本人が計画を立てて、ヘルパーさんたちに伝えます。スーパーだって、用途によってマルエツかイトーヨーカドーか、ご本人が選びます。「今日は図書館は休館日だから代わりにブックオフへ」といったことも、ご本人がばっちり調べています。

そして、お店などでは、ヘルパーさんが代わりに注文するのではなく、時間がかかってもご本人が直接注文できるようにサポートして下さっているのが、言語聴覚士としては本当にありがたいです(そのご様子は連絡ノートで支援者全員が共有しています)。こうして、会話の機会が格段に増えたことで、言語機能は今でも確実に伸びています!

そして、こうしたお出かけの経験を積み重ねる中で、ご本人の出かけたいという希望も着実に広がっていきました。

「障害者用のヘルプマークを取りに聖蹟桜ヶ丘まで行きたい」

「誰も介入しない日曜日に一人でセブンイレブンに行きたい」。

特に、車椅子で一人でセブンイレブンに行きたい、というチャレンジはこれまでのようにヘルパーさんと一緒というのとは少し質が違います。当初はみんな心配していましたが、玄関の出入り、アパート前スロープ…作業療法士と一緒に何度も練習を重ね、ついにシャキシャキのレタスサンドイッチや出来立てのから揚げチキンを買ってくる自由を手に入れました!

そして、今回は、ご本人から、川崎市にある藤子不二雄ミュージアムに行きたい!との希望。

私も初めて聞いた時は、「ヘルパーさんの介入時間に行って帰って来られるかな?」と一瞬思いました。でも、私たちにその希望を口にする前に、ご自身で、「長時間のヘルパーさんが入る曜日は本来なら定休日だけど春休みなら開いている」「経路はタクシーで狛江駅まで行けば時間を短縮できる」「そうすると入館予定時間の予約はこの時間」「チケットは障害者と介助者1名までは無料」といった情報をホームページやYoutubeなどを駆使して、コツコツを調べてました。さすが用意周到なSさん!そして、失語症以外の高次脳機能がしっかりと保たれていることを改めて実感しました。

もう、こうなると支援者みんなの一大プロジェクトです!お出かけ前の連絡ノートは、ミュージアム関連のことで溢れていました。みんながこのプロジェクトの成功のためにちょっとずつ力を貸してくれて、準備も順調に進みました。ちなみに、私が介入した日はミュージアムのホームページを開いて待っていて、チケットを予約するお手伝いを仰せつかりました!そしていよいよ当日。

お土産代わりに見せていただいた沢山の写真には、この日のためにと用意していたジャイアンTシャツを着て、充実のひとときを過ごした様子が写し出されていました。

その後の1週間、介入する支援者は漏れなく写真を見せていただき、楽しいひとときのおすそ分けをいただきました。

そして、今回、ブログでご紹介したいとお願いしたら、自らお気に入りの写真を選んでくださいました!

「行きたい場所」へ「行きたいタイミングで」で行けることの大切さを、今回のケースで改めて感じました。私たちの事業所のコンセプトにもありますが、これからも「行きたい場所」と「行ける場所」のギャップを埋めるお手伝いをしていけたらと思います。