最期まで好きな物を食べる

最期まで好きな物を食べる

こんにちは。言語聴覚士の加藤です。

4月中旬、私が担当していた利用者様、Sさんが旅立たれました。パーキンソン病の発症から15年。車椅子で自宅内中心の生活でしたが、大谷選手、大相撲、箱根駅伝、大学ラグビー、それぞれ成績を几帳面に記録したり、新聞を切り抜いて優勝を予想したりと、80代後半になっても好奇心を忘れないことの大切さを教えて下さった方でした。

 

そんなSさんは、昨年11月に誤嚥性肺炎になり、一時は絶食、内服も困難なほど厳しい状況になりました。でも、そこから、ご本人の頑張りはもちろんのこと、ご家族、訪問診療、訪問歯科、当事業所からの看護師とリハビリ、まさにONE TEAMの体制により、奇跡の大復活を遂げられました。

 

でも、本当に大変だったのはここから。誤嚥を防ぎつつ、いかに栄養状態を改善するか・・・お食事再開直後は、まずはペースト状やゼリー状の嚥下食でいかにカロリーを稼げるか(まずは1日1000kcal目標!)を訪問歯科の先生(仙川の杜デンタルクリニックの大谷愛子先生)が細かく計算して、奥様にアドバイスをしてくださいました。

 

 

少し元気になってからは、少しでも嗜好に合うもので栄養状態を改善させようと、エバースマイル社のムース食からお好きな味をご本人に選んでもらいました(好きな物を選べるって本当に大事!)。こちらには初期の栄養アップにあたって随分助けられました。

 

 

エバースマイルのムース食についての情報はコチラ↓↓

https://ever-smile.jp/mousse/

 

でも、やはり市販の嚥下食だけでは飽きてしまいます。また、元気になってくると、「パンが食べたい」「味噌汁が飲みたい」「甘い物も食べたいな」という様々なご希望も出てきます。そこをどう工夫するかが、STとしての腕の見せ所!

写真は、レンジで作ったフレンチトースト、温泉まんじゅうから作ったおしるこ、じゃがいものすりおろしを入れた味噌汁です。どれも「美味しい!」と定番になりました。

 

 

今度は奥様から、「私、鶏ガラスープを手作りで作ってるのよ。それを元に何か作れないかな?本人もラーメンが食べたいと言っているし」とのリクエストが。そこから、麺を短く切ってトロミをつけたラーメンや、かき玉中華スープなどが完成しました。私も味見させていただきましたが、さすが手作りの鶏ガラスープ、ダシが利いていて美味しい!

 

 

最大の難関は魚です!缶詰のサバの味噌煮をほぐしてお粥に混ぜてみましたが、喉に引っ掛かってむせてしまいました。そこで、訪問歯科の大谷先生にご相談したところ、「ミキサーゲル」というゲル化剤を紹介してくださいました。

これは、ほぐした魚にお湯とこのパウダーを入れて手で混ぜるだけで、魚の風味を損なわないまま、ほどよくまとまります。これをお粥に載せて召し上がっていただいたところ、ムセませんでした。これでお魚問題もクリア!

写真は焼鮭としらすです。

 

 

ミキサーゲルについての情報はコチラ↓↓

https://miyagen.net/mixergeltokucyou.html

 

11月の誤嚥性肺炎から5か月。本当によく頑張られたと思います。食べて元気になられてからは、トイレにも行けるようになり、ご家族介助で入浴も出来ました。

その後、4月に入って上気道感染がきっかけで再び肺炎になり、力尽きる形にはなりましたが、11月の誤嚥性肺炎の時は自宅での介護に不安を感じていらっしゃったご家族にも、今回は「自宅で見送ることが出来てよかった」と仰っていただきました。

 

実は、今年1月初めのブログにもSさんは登場しています。その時は「七草粥を来年も一緒に食べましょう」という約束をしたことをご紹介させていただきました。約束は果たせませんでしたが、沢山の思い出と、様々なお題をいただきチャレンジした結果私の手元に残ったレシピは、次の利用者さんにリレーしていこうと思います。